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食にまつわる話題

シャーレ生まれの未来食ー培養肉"チキンナゲット"の販売が始まる

 この度、シンガポールではニワトリの羽の細胞から培養された培養チキンナゲットが、世界で初めて発売されました。

 「土地が狭く、食料の生産に限界があるシンガポール。国内の農畜産業の規模が限定的なこともあり、政府は新たな食料の生産技術の導入にも前向きだ。」(朝日新聞デジタル2021年1月19日)

 培養肉とは、動物から取り出した細胞を、体外で増やして作る肉の代用品です。2013年、オランダの研究者が、開発した培養肉を用いたハンバーガ試作しました。その試食会でのハンバーガは、1つ3500万円だったそうです。この試食会以降、世界中で培養肉の研究が活発になっています。

  f:id:Dr_Salmi:20210127135529p:plain   f:id:Dr_Salmi:20210127135622p:plain3500万円也!

 培養肉に期待が集まる理由として、環境問題が挙げられます。放牧地確保のために森林伐採が進んだり、家畜の糞尿から発生するメタンガスが、地球温暖化に関係していると言われています。

 また、培養肉が期待される別の理由として、その安全性も注目されています。培養肉は「クリーンミート」と呼ばれることもあります。培養槽で作るため、農薬、食品添加物、成長ホルモン、細菌などに汚染されていないからです。

 さらに、1kgの牛肉を作るのに、25kgのとうもろこしと20,000リットルの水が必要で、効率の悪さがあります。牛の飼育に必要な食糧の量削減することは難しいと思います。しかし、培養技術の改良により、省資源で作ることができれば、培養肉ステーキはより現実的になり、牧場から牛がいなくなる日が来る? かもしれません。

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 今回の新聞記事の培養肉チキンナゲット、「価格は1皿23シンガポールドル(約1800円)で、高級鶏肉の料理と同じ程度の値段」だったそうです。2013年のオランダ培養肉ハンバーガーよりはお求めやすくなっていますが、お手頃な値段に落ち着くには、もう少し時間が必要なようです。

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