Dr_Salmiの研究室

食にまつわる話題

お茶は発酵で作られていない?

 発酵食品の健康効果はますます注目されています。ヨーグルト、納豆、キムチなど、微生物のがその製造に欠かせないこともよく知られています。お茶の製造で「発酵させた」という表現が教科書や巷のことばとして目に付くので、気になって調べてみました。

 生化学辞典第二版によると、「発酵:広義には有機物質が微生物によって分解される現象を指すが、狭義には、炭水化物が微生物によって無酸素的に分解されることをいう」ということです。いずれにしても発酵とは、微生物が関わっているのが基本です。

 実際、手元にある食品学のテキストの発酵食品の項目には、「パン、キムチ、納豆、味噌、ヨーグルト、かつお節、日本酒」などが挙げられていますが、「茶」の文字は見当たりません。しかし、嗜好品としての「紅茶」の説明では、発酵の間に紅茶の色や香りが生成する旨、掲載されているものの、微生物の「び」の字も出てきません。どうやって発酵する??

 お茶の発酵とは、茶葉や茎に含まれる酵素によって進む「酸化」のことを意味するようです。この酸化反応では、ポリフェノールの一種のカテキンどうしが結合し、エピガロカテキンガレートなどが生成します。紅茶の製造では一定期間この酸化を行い、烏龍茶は酸化反応を途中で止めたものです。緑茶の製造ではこの酸化反応を行いません。

 茶の酸化が進むとカテキンの量が少なくなるので、紅茶やウーロン茶よりも、緑茶の方がより多くのカテキンを含んでいます。ちなみに、「緑茶を毎日5杯以上飲む人は、1杯未満の人と比べて認知症の発生が統計的に低くなる」そうです。(参考:科学的に正しい食品の大百科・NEWTON PRESS)。

 おしまいに最初の疑問に戻りますが、お茶の製造に全く微生物が関与しないわけではなく、プーアル茶は、酵母や乳酸菌をつけて本当に発酵させて作っているようです。